愛猫にとって良い食事の条件とは必要なカロリーや栄養素をバランスよく摂り、嗜好性すなわち愛猫の心が満たされることであるとされています。
飼い主さんにしてみれば愛猫が欲しそうにするとついあげたくなりますよね。あげてはいけないものについては漠然とした知識しかないのではないでしょうか。
ここでは猫に必要な栄養素や与えてもいいもの、欲しがっても絶対に与えてはいけない食べ物などを紹介していきます。
猫に必要な栄養素とは
猫にとって必要な栄養素は人間と同じで6大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、そして水となっています。
ここでは各栄養素と猫との関連について紹介します。
炭水化物(糖類)
炭水化物は体内に入ると脳や筋肉に取り込まれエネルギーの源になります。主な含有食品は米、でんぷん、とうもろこし、いも、砂糖になります。カロリーとしては1グラム当たり4キロカロリーです。猫にとっては大量に必要というわけではありません。
また炭水化物は単糖、二糖、多糖に分類されるのですが、牛乳などに含まれる「ラクトース」は二糖になり猫の体内には「ラクターゼ」という消化酵素が不足しているため摂取すると下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。
たんぱく質
たんぱく質は筋肉やホルモンなど体内組織に変わります。主な含有食品は赤身肉、魚、大豆、牛乳、チーズ、卵白になります。カロリーとしては1グラム当たり4キロカロリーでAAHA(アメリカ動物病院協会)では体重1kgにつき5g以上摂取を推奨しています。
たんぱく質は体内で22種類のアミノ酸に分解されるのですが、猫の場合11種類の必須アミノ酸と2種類の準必須アミノ酸が体内で合成できないため食事で補わなければいけません。
そして猫の肝臓は炭水化物の代謝力は低いですが、たんぱく質の代謝力は高く分解されるためたんぱく質不足に陥りやすいとされています。猫は肉食動物であるが所以ですね。
脂質
脂質は脳や筋肉に取り込まれエネルギー源として使われ、「単純脂質・複合脂質・誘導脂質」の3種類のうち食事から摂取する脂質は単純脂質で主な含有食品はバター、肉の脂身、マヨネーズ、卵黄、植物油、生クリームになります。カロリーとしては1グラム当たり9キロカロリーになるので摂取量を考えなければ肥満につながり余病を併発しかねません。
脂質は猫の体内では合成されないため食事で摂る必要な脂肪酸を必須脂肪酸といいリノール酸、αリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサヘキサエンサン酸(DHA)になります。
ビタミン
ビタミンは体調を整えるのに不可欠な成分で「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」に分けられます。
脂溶性ビタミンはビタミンA・D・Eで、水溶性ビタミンはビタミンB1・B2・B6・B12・ナイアシン・葉酸・パントテン酸・ビタミンCになります。
猫はビタミンCだけは体内で合成できるためわざわざ摂取しなくてもいいようです。
ミネラル
ミネラルとは無機質のことで生物にとってはとても必要なのですが、摂取量を慎重に考慮しなければいけません。多くても少なくても体調を崩すことになります。
成分としては鉄・カルシウム・マグネシウム・リン・亜鉛・カリウム・ナトリウム・ヨウ素になります。
水分
猫の先祖は砂漠出身のためノドの渇きに堪えたりおしっこを濃縮して我慢できる能力がありますが決して褒められるものではありません。健康に害を及ぼすこともあるのです。
猫の体は子猫で80~90%、成猫は60~70%が水分で占められているとされています。そして猫に必要な水の量は「1.2×(30×体重kg)ml」で計算する数値が目安とされています。水を飲まないと脱水症状を起こしたり泌尿器系の病気を発症する危険性もあります。
常に清潔で新鮮な水を愛猫が好んで飲める環境を作ってあげたいものです。
猫に与えていい食べ物
猫は完全に肉食動物です。そして猫の味覚は人の10分の1以下であるとされています。甘さや辛味をあまり感じないということです。ですから、本来なら総合栄養食であるキャットフードを食べていれば健康的にも栄養的にも問題はありません。むしろ推奨したいくらいです。
でも愛猫が欲しそうにしていれば飼い主さんとしてはあげたくなりますよね。
ここでは猫に与えてもいい食べ物をご紹介します。
肉類
たんぱく質が豊富に含まれる肉類は猫にとって必要な食べ物といえるでしょう。
特に鶏のささみや豚肉は低脂肪で高タンパクなためお勧めです。
与えるときには火を通し、なるべく味付けはせずに細かく刻んでください。湯がいたものがいいですね。
魚介類
猫にとって大好物と思ってしまいがちな魚ですが、小骨や余分な脂は取り除き切り身を湯がくか火を通します。
もちろん味付けはしないでください。
また干物は塩分が高いので与えないようにしてください。
あと猫は海苔が好きです。こちらも味付け海苔ではなく味の付いていない海苔をあげてください。ただ注意したいのは海苔はミネラル分が多いので与えすぎると尿路結石の原因になることがあります。量を考えてください。
かつお節も猫は大好物ですがミネラル成分が多いので与えすぎないように気を付けましょう。
煮干しについては無塩のものを1つあげる程度にしてください。
野菜
肉食動物の猫が食べても大丈夫とされる野菜は大根・トマト・きゅうりになります。この3点については生のままでも食べることが可能です。
火を通したり量を加減しながら与えていい野菜としては白菜・人参・キャベツ・ケール・ほうれん草・ブロッコリー・カリフラワー・とうもろこしになります。
キャベツに含まれる「リン」、ほうれん草には「シュウ酸」は膀胱炎や尿路結石の原因になりますし白菜・ケール・ブロッコリー・カリフラワーは大量に摂取すると甲状腺の機能低下になることもあります。人参においては固いため消化不良を起こしやすいため柔らかくしてあげなければなりません。
野菜には全般的に「セルロース」が含まれており猫はこのセルロースを分解する機能を備えていないため量を多く食べると下痢・便秘・嘔吐、消化不良を引き起こす可能性があるので与えるときは少なめの量にしてあげてください。
その他
猫にとって特に炭水化物は必要ではありませんが、ごはんや麺類を微量であれば与えても大丈夫です。
ゆで卵、カッテージチーズなども与えてもいいとされています。
猫に与えていけない食べ物
愛猫に与えてはいけない食べ物は含有成分が直接死に至ることもあります。欲しがるからついあげたでは済まされません。
ここでは絶対に与えてはいけないものをご紹介します。
肉類
基本として生の肉やレバーは与えないようにしましょう。
豚肉の生には「トキソプラズマ」という寄生虫の感染の恐れがあります。よく火を通してください。
またレバーは含有されているビタミンAを過剰に摂取されても体外へ排出されないため「ビタミンA過剰症」となり骨の変形に繋がることがあります。
少量を与えるのであれば問題はありません。
魚介類
生のイカやハマグリなどの貝類には「チアミナーゼ」というビタミンB1を分解する酵素が多く含有されているためビタミンB1欠乏症になり危険です。スルメも同じです。
またアワビやサザエに含まれる「フェオフォーバイド」は皮膚病の原因にもなり耳が腐るといわれたりもします。
魚の骨も消化器官に刺さりやすいのでNGです。
野菜
ネギ科に属するネギ・わけぎ・にんにく・にら・長ネギ・あさつき・玉ねぎは絶対に与えてはいけません。「溶血性貧血」になり下痢や吐き気が起こり心拍数が上がり危険な状態になります。
またアボカドを与えると中毒症状を起こし痙攣や呼吸困難に陥ります。
ぶどうやレーズンも止めた方がいいです。腎機能障害になり最悪は死亡することもあるようです。
その他
代表的なのはチョコレートです。「テオブロミン」という成分が下痢や嘔吐を引き起こし最悪は死に至ることもあります。
甘いお菓子類やコーヒーなどに含まれるカフェイン、アルコール、香辛料も絶対に与えないでください。
そして生卵。生の白身に含まれる「アビジン」という酵素が体内の「ビオチン」を破壊するため皮膚炎や結膜炎の原因になります。火を通すことによりアビジンが壊されます。卵を与えるときは必ず火を通してください。
あとは牛乳やアイスクリームなど人間の食べ物は基本与えない方がいいです。
まとめ
いかがでしたか。
人間にとっては栄養も豊富で嗜好的にも満足のいく食べ物でも猫には想定外の毒に繋がってしまうものがたくさんあります。
人間と猫では体の構造が違うため仕方がないことなのですが、「可愛いからつい…」ということはやめた方がいいですね。
飼い主さんが気をつけることで愛猫の健康管理をしっかりして出来る限り長生きさせてあげたいものです。