6月3日(日)にフジテレビでザ・ノンフィクション「犬と猫の向こう側」が放送されて大きな反響を読んでいます。今回放送された内容は、動物保護団体「犬猫みなしご救援隊」の代表、中谷百里さんの活動に同行したもの。猫や犬が好きだったら誰しもが目をつぶってはいれない問題が「犬猫の殺処分」ですよね。犬猫の殺処分ゼロを突き詰めていくと、新たに突き当たる問題が「多頭飼育崩壊」です。「多頭飼育崩壊」とは、猫や犬が好きでまずは1匹や2匹と少ない数を飼い始めるのですが、不妊去勢手術を行わなかったために自分では世話しきれないほどに犬や猫が増えてしまうことを言います。今や事件としてニュース番組で取り上げられることも多く、逮捕されるケースも出てきています。多頭飼育崩壊で増えてしまった猫や犬はそのまま保健所に保護されて、新しい飼い主が決まらないと殺処分されてしまいます。中谷さんは、そんな殺処分されてしまう猫や犬を保護しています。今回この番組のナレーションを務めているのは、女優の石田ゆり子さん。ハニタビのお母さんとして多くの猫好きさんたちが知っています。「犬と猫の向こう側」を紹介していくとともに「多頭飼育崩壊」についても考えていきましょう。
ザ・ノンフィクション「犬と猫の向こう側」
昨今SNSなどの復旧により、日本のペットブームがさらに盛り上がっている気がします。猫ブームはもちろんのこと、犬の人気も衰えていません。人気になるとともに、ペットとして猫や犬を飼う人が増えていきますが、その陰に安易な気持ちで飼ってしまったがために飼えなくなってしまい犬や猫を捨てる飼い主、何も考えずに増やしてしまい多頭飼育崩壊になってしまった飼い主など、目を背けられない問題がたくさんあります。1年間に殺処分される犬と猫の数は、5万5998匹(2016年環境省)にのぼるといわれています。「飼い主がいないなら、私が引き受ける!」と動物保護団体「犬猫みなしご救助隊」の代表、中谷百里さんは広島県の郊外で殺処分と戦っています。広島市にある本部に犬140匹、猫1000匹を収容、栃木県にも犬90匹、猫300匹を収容するシェルターを持っています。このシェルターを使ってたくさんの犬猫を保護してきました。
「犬猫みなしご救助隊」の代表、中谷百里さん
中谷さんは、元飲食店のオーナーでフィリピンパブで踊っていたこともあるという異色の経歴も持ち主。もともと動物好きだった中谷さんは、猫を拾っては店の2階で飼うようになり、それが保護活動のきっかけになります。
そんな中谷さんを公私ともに支えているのが、「犬猫みなしご救助隊」の副代表でもある田原好巳さん。もともとお店の常連客で、建設会社の社長の田原さんは中谷さんにぞっこんでした。今では中谷さんの仕事を体を張って手伝っていて、25年にわたって保護活動を一緒にしています。
2013年には広島市の動物管理センターからすべての猫を引き取るという無謀とも思える行動にでます。その結果、広島市の猫の殺処分はゼロになります。今では広島県全体で処分を行っていません。中谷さんの行動が社会を変えるきっかけを作りました。中谷さんは「この子たちの天命で死んでいくんだったらいいけどね。人間が殺しちゃいけん」と話します。活動を支えるのは年会費3000円~の支援者からの寄付。一匹でも多くの命を救ってほしいと今では支援者の数が3000人を超えました。
猫の“多頭飼育崩壊”
2017年11月、観光バスを改装した「みなしご号」が犬や猫を救いに高速道路を急いでいました。運転しているのは田原さん、バスには世話の必要な子猫や子犬の他、保護したヤギやしかも同乗中!
このバスは、中谷さんの活動を応援するバス会社の善意で所有することが出来たもの。バスはある街で起きた猫の多頭飼育崩壊の現場に向かっています。一人暮らしの女性が2DKのアパートに猫30匹近くを飼育。掃除が行き届かず悪臭がするなどしてクレームが来ていました。中谷さんの方から保健所に言って、中谷さんと一緒にその飼い主の家に行くことになりました。行ってみると外からでも感じる悪臭に中谷さんは顔をゆがめます。何とか飼い主の女性とコンタクトを取ろうと懸命に挑戦しますが、女性は玄関を開けようとせず大声で「帰れ」と怒鳴り散らします。中谷さんや保健所の人の話に聞く耳を持たず、警察まで出動するまでに…もう今回は猫を保護するのはあきらめてくださいと警察からも言われてしまい、肩を落としていると…玄関のドアが開き女性が中谷さんと話がしたいと言い出したのです。
ここで暮らしていた女性・かえでさん(仮名)に中谷さんは広島の施設の映像を見せて、猫をここで暮らさせるのはどうかと提案します。そうすると、なんとかえでさんは広島の施設の事を友人から“結構きついおばちゃんだけど猫のためだけにしかせん人や”と聞いたといって知っていたのです。かえでさん自身は現在闘病中で働くことも出来ず、経済的にもひっ迫しています。一人で猫の世話をするのには限界を迎えていました。中谷さんは「猫も大事だけど、頑張ってほしいんよ。今から生活、建て直さんといけんじゃない?立て直すための協力はいくらでもするんで」と話します。そして早く病気を治して、元気になったらうちで働けばいいとも話しました。猫だけでなく、多頭飼育崩壊を起こしてしまう飼い主の“孤独”にも寄り添おうとする中谷さん。かえでさんも中谷さんに心を許したように感じました。この日は子猫9匹を引き取る事となりました。そして、中谷さんはかえでさんと友達になりました。中谷さんはかえでさんの事をこんな風に話します。多頭飼育崩壊をしてしまっている事が間違いなのは事実だけど、猫好きなことには変わりない。同じ猫好きの観点から話を進めていくのが大切だと。
避妊去勢手術の大切さ
岡山県備前市日生町はカキの養殖が盛んに行われている港町。中谷さんはここで野良猫の一斉避妊去勢手術を行います。処分される命がある限り、増えないようにするしかないのです。ここでかえでさんの家にいた猫たちも一緒に手術を行います。
協力してくれる獣医さんはバンビのどうぶつ病院(大阪)の後藤風水光人さん。中谷さんとこの活動を続けて6年になります。野良猫の一斉避妊去勢手術は地元のボランティアが猫を集め、中谷さんが獣医師さんを手配する共同作業。費用は寄付で賄います。
たくさん保護された猫が手術を受け、ボランティアさんのもとへ帰っていきました。今回手術する場所は、備前市の市長さんが貸してくださり今回の手術を行うことが出来ました。実際にどのように手術が行われているのか市長の田原さんも見学に来ていて「こうゆことをやっていただけている。正直初めてでびっくりしました」と語っていました。
かえでさんの猫たちの手術はどうなったかというと…1匹の猫がなんと妊娠していました。高齢で栄養状態が悪く、出産するには命に危険のある状態でした。望まれない命なら生まれる前に手術する…この活動につきものの苦渋の決断です。
今回の放送を実際にみて本当に何度もを目をそむけたくなる場面が多くありました。猫や犬をはじめとしたペットは、もちろん私たちに癒し安らぎを与えてくれて、長く暮らしているとなくてはならない存在になります。ですが人間の為に生まれている命ではない。猫や犬の命は猫や犬のもの、そう強く実感させられました。
今回放送していたのは前編。後編は中谷さんが100匹の猫と暮らす1人の男性と出会います。多頭飼育崩壊の先に見える人間の孤独。猫や犬が幸せに暮らせる世の中になるように、中谷さんの活動は続きます。
後編のナレーションももちろん、石田ゆり子さん!前編のナレーションでも全体的にはいつものような優しく包み込むような声色だったのですが、ところどころ、悔しい気持ちがにじみ出るような語り口調に変わったり、強く訴えるような口調だったり石田さんの思いを感じられる部分がありました!後編は、6月3日(日)14:00~放送です。是非お見逃しなく。