猫エイズという病気があるという事は、なんとなく聞いたことがある方もいると思います。どんな病気なのか、、、わかるようなわからないような?今回は、この猫エイズについて詳しくご説明します。2008年から日本でも可能になったワクチン接種の事など最新の情報をご紹介しています。また、猫エイズに感染してしまった猫との暮らし方についても書いていますので、ぜひ参考になさってくださいね。
猫エイズってどんな病気?
猫エイズとは、猫後天性免疫不全症候群の通称で、猫免疫不全ウイルス(FIV:通称ネコエイズウイルス)に感染することで引き起こされる様々な症状を伴う病気です。人のエイズと同様に、進行により免疫が低下し、徐々に病気に対する抵抗力が失われ、やがて死に至る恐ろしい病気です。一度感染すると完治することはありません。人のエイズウイルスが猫に、猫のエイズウイルスが人にうつることはありません。
どうやって感染するの?
感染ルートは?
ネコエイズウイルスは、感染した猫の唾液や血液の中に含まれています。このため、猫同士がケンカした時などにできる咬み傷から、ウイルスが体内に侵入して感染する場合がほとんどです。
感染力はとても弱く、交尾自体での感染はほとんどありませんが、交尾の際にオス猫が雌猫に咬みつくことによる傷からの感染はあります。
感染猫とのグルーミングや食器を介しての感染はまずありませんが、口内に傷がある場合は、そこから感染する可能性があります。
母子感染は極めて稀です。
ウンチや尿にはウイルスが出ない為、猫同士が同じトイレを使用しても感染しません。
いずれにしても、唾液の中のウイルスが直接血管に入るくらいの濃厚感染がなければ感染は成立しません。もし人が、感染している猫を触って、その手で他の猫を触っても感染しません。また、空気感染もありません。
動物病院で検査ができる
動物病院で、白血病ウイルスとの同時検査が可能です。通常10分ほどで判定結果がでます。
ネコエイズウイルスは、白血球のT細胞やマクロファージに潜伏するため、血液検査で抗体が検出されれば陽性(感染している)と判断される。感染してから抗体が確認できる状態になるまで約1カ月かかります。その間に検査をしても誤陰性となることもあるので、1カ月以上室内飼いをしてから検査をするといいでしょう。
赤ちゃん猫の場合は、初乳に抗体が入っているので、生後2カ月くらい経ってから検査した方が良いです。
検査では、誤陰性や誤陽性の場合もあるため、結果に不安がある時は、期間をあけて何度か検査を受けることをおすすめします。
飼育環境をチェック!
猫同士のケンカで感染することが多いため、以下のような猫は特に感染に注意しましょう。
- 屋外に出ることがある
- 野良猫と接触する可能性がある
- 多頭飼育の中に感染猫がいる
- よくケンカをしたり、傷がある
- オス猫で去勢をしていない
このような環境にある場合には、感染の予防を考えましょう。
予防方法は?
ワクチンで予防接種
動物病院で猫エイズワクチンを接種することができます。
ワクチン接種前には、健康状態のチェックが必要です。事前に動物病院に相談すると良いでしょう。接種後は、安静に過ごさせ、副作用が出ていないか確認する必要があります。
ワクチン接種をする前に、猫を見守ることができる環境を整えましょう。
ワクチンは、初年度に計3回(2~3週間隔)、その後は1年に1回の接種が必要です。
飼育環境を見直そう!
ケンカ等による体液の接触感染を防ぐことが重要です。そのため以下ような環境が理想です。
- 完全室内飼い・・・外出させないなどして、他の猫との接触をなるべく避けましょう。
- 避妊去勢手術・・・オス猫のケンカや徘徊は去勢によって抑えられます。
- 感染猫の隔離・・・多頭飼育の場合は、それぞれの猫の感染有無を病院で確認し、感染猫はケージで飼うなど分けて飼育しましょう。
猫エイズ撲滅のためにも猫の完全室内飼い・避妊去勢手術をすることをおすすめします。
新しい猫を迎える場合は、両方がウイルスに感染していないかあらかじめ検査を受けて確認しましょう。
猫エイズになるとどうなるの?
症状について
猫エイズの特異的な症状はありません。
発症すると、他の病気や感染症に対する抵抗力が弱くなり、衰弱して死に至ります。
感染直後の“急性期”から、症状の出ない“無症状キャリア期”を経て、症状が出る“エイズ発症期”に進みます。
無症状キャリア期が長い場合、発症しないまま一生を終える猫もいます。
急性期
感染後1カ月ほどで風邪の諸症状、下痢、リンパ節の腫れなどの軽い症状が1カ月~1年ほど続きます。この症状は感染したすべての猫に出るわけではありません。
無症状キャリア期
ウイルスがリンパ球の中に潜んでしまうため、いったん症状は消えますが、完治したわけではありません。この間にウイルスは猫の体内でリンパ球を破壊し、次第に免疫力を奪っていきます。期間は通常4~5年、猫によっては10年以上この状態が続きます。症状はありませんが、感染してしまっているため、この期間も他の猫への感染対策は必要です。
エイズ発症期
免疫力の低下により、感染や炎症が起こった状態です。以下のような症状が出ます。
- 口腔内疾患(口内炎、潰瘍)
- 体重減少、下痢、嘔吐
- 風邪の症状
- ダニや真菌感染などの皮膚病
- 肺炎、胸膜炎、悪性腫瘍、その多臓器障害
- 食欲減退、脱水
病気に対する抵抗力がなくなってくると衰弱し、やせ細り、死に至ります。
治療は何をするの?
ネコエイズウイルスの特効薬は無いため、症状に対しての対処療法になります。
例えば、口内炎や歯肉炎は治療をする。細菌や真菌に対して、抗生物質や抗真菌薬の投与する。体重減少が引き起こす貧血に対する輸血などです。なるべく苦痛をやわらげ病気の進行を遅らせてあげます。免疫力を補助する効果のあるネコインターフェロンを投与することもあります。
ウイルスに感染しても必ずしも発症するわけではなく、体が弱っているときに発症しやすいのです。つまり、病気にうち勝つ丈夫な体を保つ、日々の健康管理が何よりの治療法です。
猫エイズの猫との暮らし方☆
ストレスを与えないように
ストレスがかかると免疫力が低下してしまいます。発症を遅らせるために免疫力をなるべく下げないようにします。
例えば、猫は汚いトイレを嫌がります。掃除をまめにして清潔に保ちましょう。
また、気持ちよくトイレを使ってもらうために、トイレのサイズや数や、設置場所にも気を付けましょう。サイズは猫の体長の1.5倍くらいの大きさが必要です。トイレの数は多頭飼いの場合、猫の数+1コを用意しましょう。設置場所は、物陰になっているような所が良いです。衛生面から、餌場の近くに設置するのは避けましょう。
他にも、頻繁にシャンプーをするなど、嫌がることはできるだけしないようにしましょう。
猫が快適に暮らせるように、落ち着けるスペースを作ってあげたり、室温を調整してあげましょう。
栄養状態を良好に保つ
猫エイズキャリアの猫は、口内炎ができやすい傾向があります。口内炎ができると食物が食べづらいため食欲不振になります。食欲の減退や水分不足は、免疫力の低下や、脱水による腎不全の引き金にもなります。普段から口腔内疾患がないか、お口の中をチェックするようにしましょう。口内に赤みがある箇所がないか、歯石はついていないか、口臭が強くないか、よだれの量などをチェックします。できれば、子猫のうちから歯磨きをしたりお口の中のチェックをして口周りを触られることに慣れされておくと良いです。
口内炎ができて、食べ物が食べづらくなった場合に、食べやすいフードに変えられるように、普段から色々なフードを試したりして、よく食べる形状や猫の嗜好をつかんでおくといいです。
フードの種類としては、肉が多く入っているプレミアムフードがおすすめです。高価ですが栄養価が高く、もともと肉食の猫に合っています。安いフードは穀物が多いため満腹感はあるが栄養価が低くなります。免疫の弱い猫や老齢の猫にはプレミアムフードがおすすめです。キャットフードのパッケージに記載されている原材料は、材料が多い順の表記になっていますので、参考にしてみてください。
スキンシップをして愛情を与えて
健康チェックの意味も込めてスキンシップをしましょう。
抱っこしたり触ったりしたとき、体重や体温、どこか痛がる様子がないかなど、いつもと変わったところがないか観察してみましょう。
ただ、嫌がっているのになでるのはストレスにつながるのでやめましょう。
免疫力が低下すると、ダニや真菌感染などの皮膚病になりやすくなります。かゆがっている様子はないか、脱毛がないかなど外見もチェックしましょう。
コミュニケーションをとって日ごろからよく観察して、その猫にあった接し方で心地よくすごせるようにしてあげましょう。
猫エイズに感染しているからといって。。。
猫エイズキャリアであっても、普通の猫として普通に生活することができます。エイズ発症期は特に体調に気を付けてあげなければなりませんが、それはどんな猫でも高齢になれば、やはり体調に気を付けなければならないですし、通院が必要になったりもします。
一番気を付けなければならない事は、他の猫への感染です。その事さえ守れれば、不必要に恐れたり、避けたりすることはありません。
猫エイズのキャリアの猫ちゃんがいる猫カフェもあります。キャリアの猫は、比較的おとなしい気性の猫が多く、のんびり一緒に過ごせるという話を聞きます。ぜひ触れ合ってみてはいかがでしょうか。
「感染ルートは?」の項でもお話ししたように、感染力は弱く、人を介しての感染はありませんので、おうちに愛猫がいる方も遊びに行って大丈夫です。