猫の柔らかくしなやかな動きや身体能力の高さには目を見張るものがありますよね。
そんな猫の素晴らしい動きの秘密はどうやら骨格にあるようです。
同じネコ科のライオンとも大きさが違うだけでほぼ同じであるとされる猫の骨格の秘密とは一体どのようになっているのでしょうか。
ハンターである猫には狩りに相応しい体であるために骨格にもとっておきの秘密が隠されているのかもしれません。
そんな猫の骨格について調べてみました。
猫のビックリ身体能力
猫の驚くほど優れた身体能力は野生だった時代に単独で狩りをする動物であったことによるものです。
猫の狩猟は物陰に身を隠しじっと獲物が近づくのを待ち続け捕獲できるベストな距離まで獲物が近づくと瞬発力を生かして飛び掛かるという「待ち伏せ型狩猟」でした。
生きていくためにはかなり高度な身体能力を必要としていたのですね。
そんな猫の身体能力についてご紹介します。
柔らかい肢体
猫の体はとても柔らかいですね。
狩りのときに瞬発力を発揮するのもその体の柔らかさのためなのです。体をグッと丸め込み一気に勢いよくピーンと伸ばすことで瞬発力が出てきます。
したがって素早く飛び掛かれるのです。
因みに瞬発力の秘密は骨のしくみに加えて筋肉に「白筋」と呼ばれる白っぽい筋肉が猫には筋肉の半分以上占めているためと言われています。「白筋」とは速く収縮できるものの疲れやすいという性質だそうです。チーターなどのネコ科の動物が狩りの際、持久力が無いのもこの白筋のせいなんですね。
また高い所から降りるとき、もしくは落ちたときでも体をひねってクルッと回転して足から着地します。これも体が柔らかい猫だから出来ることなのです。
よく動く前足
猫の前足は強靭で器用に動くことができます。
これは狩りの際、持続性の低い猫が元気な獲物を捕まえるのに前足も大きな役割をしています。獲物に噛みつき前足でがっつり抱え込んで仕留めるからです。猫の前足は肘関節が柔らかく足をひねって足の裏を内側に向けることが出来ます。
また肘関節の形状が長方形になっていることや小さい鎖骨があることなどがひねることを可能にしているようです。
出し入れ自由な爪
猫の有能な武器の1つである爪。
しかし犬のようにいつも出しっぱなしだとすぐに減ってしまいます。また爪が出ていると「カシャカシャ」と足音がしてしまうので獲物に気づかれてしまいます。
鋭い爪をすり減らさず、そっと忍び寄るために爪を使うときだけ出して普段は格納しているのです。
この爪の出し入れは指の骨と爪をつなぐ靭帯と腱を使って行われています。
爪が引っ込んでいるのは骨の上側にある靭帯が収縮しているからで爪を出すときには骨の下側にある腱が後ろ方向に引っ張られることで爪が出るというしくみになっています。
狭い所でも通れる
昔から猫はヒゲが通ればどこでも通り抜けることが出来るといわれていますよね。
実際、狭い所でも首を突っ込んでにょっきりと顔を出しスルスルと通っていくところを何度か見たことがあります。
この秘密は猫の肩甲骨にあったのです。猫の肩甲骨は首の後ろ方向へ縦についており人間とは違い、鎖骨とくっついていないため肩の柔軟性があるから頭さえ通れば体もスルリと通り抜けることができるのです。
猫の骨格
ネコ科の動物の骨格はサイズが違うというだけで猫とライオンやトラといった大型のネコ科動物とほぼ同じといわれます。頭蓋骨・頸椎・肩甲骨・胸椎・肋骨・腰椎・骨盤・上腕骨・前腕骨・手根骨・大腿骨・下腿骨・足根骨・尾椎で形成されています。
やはり完全な肉食動物であることから狩りに必要な骨格をしているのです。
そんな狩りに相応しい猫の骨格についてまとめました。
頭と首
猫の頭蓋骨は頭蓋部と顔面部に分かれます。
頭蓋部は後頭骨・頭頂骨・蝶形骨・前頭骨・側頭骨等の11種類の骨で構成され脳を守っており顔面部は上顎骨・下顎骨で構成され目や鼻などを支えています。猫の頭部は短頭型で歯の数も犬が42本あるのに対し猫は30本しかありません。
猫の場合、奥歯から脳までの距離が非常に近く、歯を支えている上顎骨と脳の間にある骨がとても薄いことから奥歯近辺を歯周病などで悪化させると菌が脳に侵入する可能性が高いとされています。
また猫の脳の重さは27~32gぐらいで体重の1%の重さになります。
動物の知能の指標といわれている脳化指数は1.0で人間の場合は7.4~7.5なので猫は人間に例えると1~2歳くらいの知能であることがわかります。
そして猫の首は頸椎で支えており数は人と同じで7個あります。
部位としては第一頸椎を環椎、第二頸椎を軸椎と呼ばれ連動により首の回旋運動させています。
胴体・体幹
胴体・体幹に当たる部位が胸椎・肋骨・腰椎です。
背骨である胸椎は人間より1個多い13個あり肋骨も人間より1本多い13本あります。
内臓を保護しているのは肋間筋と呼ばれる肋骨の間をつなぐ細い筋肉になります。
胸椎の運動の中心となるのは第10胸椎と第11胸椎の間のようです。
また腰椎についてですが、数は人間より2個多い7個あります。そのため人に比べて脊柱を柔軟に動かすことが可能なのです。
更に猫は腸が短く自由に内臓の位置を変えることができるため脊柱で内臓を支える必要がないためより柔軟性がプラスされます。
猫が高所から落ちたときに体を器用にねじって着地出来るのもここに秘密があったのですね。
腰としっぽ
腰からしっぽを構成するのは骨盤と尾椎になります。
骨盤は寛骨・腸骨・恥骨・坐骨・仙骨から構成される半球形の骨格のことです。
腰椎の最下部に位置する仙骨は3~4個の骨で出来ています。
寛骨には寛骨臼と呼ばれる大腿骨がはまる箇所があり柔軟な靭帯が大腿骨と寛骨臼をつないでいるため激しい運動にも耐えることが出来ているのです。
尾椎とはしっぽを支える骨で一般的には18~19個の骨で構成されているのですが、猫によってその数は様々になります。少ないもので4個、多いものでは24個になります。
またカギしっぽといわれる短いしっぽの猫が時々いますが、その場合尾椎自体がいびつに曲がっています。触ると先端がほぼ直角くらいに曲がっているのがわかります。
しっぽが長くても短くても感情はきちんと表してくれますね。
前足
猫の器用な前足は肩甲骨・鎖骨から始まり上腕骨・前腕骨・手根骨・中手骨・指骨で形成されています。
肩甲骨は体幹と前足の筋肉をつないでいます。猫が歩いていると背骨より上にモリモリと上がる骨が見えますよね。
鎖骨は首の付け根にあり他の筋肉(鎖骨僧帽筋・鎖骨上腕筋・鎖骨乳突金)の土台になっているのですが、かなり小さめで他の骨とはつながっておらず浮いた状態にあるため狭い場所を通るときなどに肩から下を頭の幅まで狭めることができるのです。
上腕骨は人間で言うと二の腕で力こぶを作る上腕二頭筋がある箇所になります。
前腕骨は橈骨と尺骨を合わせたものです。この2つの骨がねじれ合い回内筋や回外筋が発達していることで手の平をひっくり返すことが出来ます。猫が前足をひっくり返して顔を洗ったり指を掃除したりしているのを見ますよね。
手根骨は手首の辺りにある細かい骨の塊を指します。手根骨の下には中手骨が5本あり、先端には指骨があります。指骨は基節骨・中節骨・末節骨に分かれ末節骨の先端に爪が生えているのです。爪の出し入れができるのは末節骨が回転するという構造になっているからなのです。
後ろ足
猫の後ろ足は大きくいうと大腿骨・下腿骨・足根骨で形成されています。
大腿骨は人間でいうと太ももの骨です。猫の歩行は「指行性」のためいつも膝を曲げた状態で歩いたり走ったりしています。
そして膝には人間と同じようにお皿のような膝蓋骨があり下腿の動きをスムーズに動くようにサポートしています。
下腿骨は脛骨と腓骨によって形成され地面からの衝撃を和らげる役目をしています。
足根骨は足首からかかとの辺りにある小さな骨の塊のことです。足根骨の下には中足骨が4本あり末端には趾骨があります。
趾骨は人間で言うと足の裏にあたり地面に接地する部分なのです。
猫の場合、前足より後ろ足の方が2倍ほど長いため後ろ足は折り曲げて空気椅子のように力を加減しながら指向性歩行するので足音も立てずに抜き足差し足忍び足ができるのです。
まとめ
猫の骨の数は全部でおよそ240本になります。人間は200本ですから猫の方が40本ほど多いのですが、構成としてはほとんど変わらないようです。
しかし細かい部分での違いが猫の身体能力を高めているということが分かりました。
猫独自の骨格があの柔軟性に富み、優れた運動能力につながっているのです。
猫を飼っていても個体別で変わってくると思いますしまだまだ知らない能力があるのかもしれません。
もしかしたら柔らかくて甘えん坊で可愛らしい愛猫がもっとスゴイ能力を隠しているかもしれないですね♡