“A cat has nine lives.(猫に九生あり/猫は9つの命を持つ)”ということわざを聞いたことがありますか?これはもちろん迷信で猫にも1つの命しかありません。それでもこのことわざは古くから言い伝えられています。ウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のなかでも猫が9つの命を持つことに触れている一節があります。何故このような言い伝えが生まれたのでしょうか?その真相を検証してみたいと思います。
この伝説が生まれた背景には・・・?
この伝説は世界中で古くから言い伝えられています。確かなことはわかりませんが、いくつか考えられる理由が挙げられているので紹介します。
並外れた身体能力から
猫が驚異的なジャンプ力やバランス感覚の持ち主なのはよく知られています。高い所から落下しても足で着地できる着地能力があります。優れた平衡感覚と反射神経のおかげで空中ですばやく体を回転させることで(空中立位反射といわれています)足で着地することができ、60㎝の高さがあれば空中立位反射ができるといわれるほどです。また体重が軽いので着地したとき体に受ける衝撃が比較的少ないこと、体重に占める脳の割合が小さいため脳震盪を起こしにくいこと、椎骨が私たちよりも多くとても柔軟であることも猫が高い所から落ちても平気な理由と考えられています。この猫の機敏さや高い運動能力は今でこそ科学的にも証明されていますが、昔の人にとっては驚異的で神的な存在であり、そこから「猫は不死身である」=「猫は何度でも生まれ変わる、猫にはいくつもの命がある」と言われるようになったのではないかという説です。
高い生命力、回復力から
猫の生命力・回復力はとても高いといわれています。私たち人間ならとても助かる見込みはないと思われる状態から回復することもめずらしくありません。数年前アメリカ・フロリダ州で交通事故にあって死亡したと思われ埋葬された猫が5日後に自力でお墓から這い出しできて生還し、「ゾンビ猫」として話題にもなりました。火事で燃えさかる建物や、地震で崩れ落ちたビルの下から猫が発見されたというニュースもたまに耳にしますよね。
また猫は高い木に登ったり、走行中の車の前を横切ったり、狭く高い塀の上を歩いたりと私たちからすると命がけのような行為をよく取ります。強い生命力を持ち、一度の命なら決してしないであろうことを簡単にやってしまうことから「猫はいくつもの命を持っている」と言われるようになったのではないかという説です。
猫の「家出」の習性から
発情期だから、好奇心から、道に迷ってしまったなど理由は様々ですが、猫の習性の一つに「家出」があります。最近は室内飼いが増えていますが、昔はもちろん放し飼いで外にも自由に出られました。愛猫が何日もの間姿を見せずに死んでしまったのだろうと思ってあきらめていたら帰ってきた!というプロセスが繰り返され、「猫は何度でも生き返る、いくつもの命を持っている」と言われるようになったという説です。
魔女の使い魔というイメージから
中世ヨーロッパでは猫は魔女の使い魔であるとみなされていました。魔女と結び付けられたその背景には人に従わず自由気ままな性質や夜行性のため夜活発に行動し暗闇に光る目が不気味であるなどがあるようです。不気味な存在で人々に不幸をもたらすとされた魔女を捕まえて処刑する魔女狩りが行われ、魔女の手先である猫(特に黒猫)も迫害されました。「魔女の使い魔」=「不気味で何度でも生き返る」というイメージからこのような言い伝えが生まれたという説です。
何故「9」なのか?
すぐれた身体能力やたくましい生命力、猫の習性や歴史がこのような伝説が生まれた背景にあるのではないかということはわかりましたが、何故キリのいい10個や100個の命でなく「9つの命」なのでしょうか?それには「9」という数字の持つ意味にカギがありそうです。
多くの国や宗教で「9」は特別な数字と考えられてきました。
古代エジプトでは「9」は特別でとても神聖な数字です。また、エジプトでは古くから猫が家畜化され人と暮らしてきました。猫は神聖な生き物とみなされ、とても大切に扱われ、神としても祀られていました。太陽神「ラー」の象徴としてオス猫が描かれ、「バステト(Bastet)」は猫の女神として知られており、太陽神「ラー」の娘だといわれています。エジプト神話の中のエジプト九柱の神々(エネアド、ヘリオポリス九柱神)は九柱の神と女神のことです。また、三位一体を表す三つ一組が三組揃った数字である「9」は最高級の数字だと考えられています。神聖な生き物として大切にされていた猫と神聖な数字である「9」を結びつけたのは自然な流れかもしれません。中国ではその発音から「9」と「久」を結びつけて「永遠」を意味するので縁起がよいとされ、さらに一文字で書ける数字の中で一番大きな数字である「9」は「無限、無数」を連想させるので幸運の数字だとされています。
この伝説は古くから多くの国で語り継がれていますが、スペイン語圏では9つの命ではなく、「7つの命」、トルコやアラビア語圏では「6つの命」だともいわれています。
まとめ
世界中で古くから言い伝えられている“ A cat has nine lives. ”日本では「猫に九生あり」ということわざで知られていて、「執念深くしぶとい、殺しても何度でも生き返る」というような意味で使われています。猫にしてみれば「執念深くなんかないし、何度も生き返ったりしないからいじめたりしないで優しくしてね」というところではないでしょうか(笑)?
猫のゴロゴロには猫自身のストレスを軽減したり、怪我の治癒効果があるといわれています。そして猫と一緒にいることで私たちにもメリットをもたらしてくれます。猫と暮らすことで血圧が安定したり、心拍数が落ち着き、心臓発作のリスクが低下したり、ペットと暮らしている子供はアレルギー発症率が平均よりも低いという報告もあります。自分のことを信頼し、愛情を注いでくれる猫の存在は私たちの心も癒してくれますよね。このような伝説が生まれるほどたくましい生命力をもつ猫は私たちの心や体も健康にしてくれます♡
「猫に小判」「猫は虎の心を知らず」「秋の雨が降れば猫の顔が三尺になる」「鳴く猫はねずみを捕らぬ」など猫を含んだ慣用句やことわざは日本だけでなく世界中にまだまたたくさんありますよね〜。何故そのように言われるようになったのか、その背景や理由を知ると妙に納得したり、新発見があったりと楽しいものです。興味のある方はぜひ調べてみてはいかかでしょうか♪